簿記1級

【2019年度版】簿記1級の難易度が高い5つの理由を解説!

こんにちは会計士てるです。

公認会計士試験に並ぶ試験として、簿記1級試験があります。簿記検定は1級から4級(簿記初級)?までがあるのですが、その中でも1級は2級とは比べ物にならないくらい難易度が高く、税理士試験の受験資格となっているほどです。

今日は、その簿記1級の難易度がなぜ高いのかについて解説します。

簿記1級の期待レベル

まずは、簿記1級の試験を実施している、 商工会議所 が簿記1級合格者にどのようなレベルを求めているのかを見ていましょう。


公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門。合格すると税理士試験の受験資格が得られる。
極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析ができる。
大学等で専門に学ぶ者に期待するレベル。

https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class1

「簿記1級は極めて高度な簿記・会計学・工業簿記・原価計算を取得」
大学等で専門に学ぶ者に期待するレベル」

これだけで、簿記1級に求められているレベルが分かると思います。簿記1級は主に、大企業の経理担当者以上のレベルの人を対象とした試験で、次に見ますが、その範囲は中小企業では恐らく扱わない論点が多数出題されます。

まずは、簿記1級ではどのような問題が出るのか見てましょう。

簿記1級の試験範囲は広大!

簿記1級の難易度が高い一つ目の理由は、その範囲にあります。次のリンクは商工会議所が公表されている出題範囲表です。

商業簿記・会計学(1~3級)
工業簿記・原価計算(1~2級)

主な論点を次にまとめました。(1級において追加された論点)

商業簿記・会計学商業簿記・会計学
貸倒引当金
(財務内容評価法、
キャッ シュ・フロー見積法 )
会計上の変更および誤謬の訂正
退職給付債務の計算 キャッシュ・フロー計算書
売価還元原価法 株式交換・株式移転
デリバティブ取引、ヘッジ会計など
在外支店財務諸表項目の換算
資産除去債務連結会計(持分法等)
固定資産の減損財務会計の概念フレームワーク
工業簿記・原価計算工業簿記・原価計算
管理可能費と管理不能費部門費計算 階梯式配賦法
純粋先入先出法業務的意思決定の分析
連産品の計算設備投資のキャッシュ・ フロー予測
配合差異と歩留差異 原価企画・原価維持・原価 改善
CVPの感度分析 活動基準原価計算
直接原価計算とリニアー・ プログラ
ミング
品質原価計算

自分で書いてて言うのもなんですが、ちょっと多すぎて引きますね。これで全体の3分の一ぐらいです。もちろん私は会計士ですので、これらの論点は全てわかるのですが、2級を受かったばかりの状態でこんなもの見せられたら、卒倒すると思います。

でも、論点を見てみれば、簿記1級が期待している大企業の経理・財務担当者以上のレベルがなんとなく理解できるのではないでしょうか。

例えば、商業簿記・会計学では、海外支店の論点が入っています。また、在外子会社の論点も入ってきます。これらは、中小企業ではまず扱わないと思いますが、今時大企業で海外に進出していない企業の方が少ないですので、大企業でこれらの会計が必須レベルで求められるの理解できると思います。(実際には海外支店はあんまりないんですけどね)

また、工業簿記・原価計算をみても設備投資のキャッシュ・フロー予測、業務的意思決定の分析といったように、大規模な投資の際の意思決定をどうするかの論点が入っています。これらも大企業の財務を意識した論点になります。

改めてあまりにも論点が多い事にびっくりしたことと思います。これが簿記1級のレベルであり、難易度を高めている理由の1つです。

各論点の難易度が難解でイメージが湧きにくい

上記の論点をみてパッとああこれはこういう時に使うんだなと分かる人は少ないのではないでしょうか。特に学生だと絶対分からないですよね。
ずばり、次の点は各論点のイメージが難しいということです。

人は理解できるものしか覚えることはできないことが脳科学的観点で分かっています。例えば、自分の電話番号を覚えるのと、無作為の数値(132097512)を覚えるのでは、桁数が一緒でも全然難易度が違うと思います。

これは、勉強の時も一緒で、具体的に想像できないものを人間が覚えるためには理解できるものを覚える時に比べて非常に時間がかかるのです。数学が苦手な人にありがちな理由と一緒ですね。何をやっているのか分かっていない。

上記の論点から資産除去債務とは何かと問われて、イメージできる人はいますでしょうか。デリバティブ取引ではどうでしょう。

資産除去債務とは、その名の通り資産を除去する際に発生する負債のことで、身近な例では、部屋を借りたときに発生する原状回復義務がそれにあたります。原状回復義務とは、部屋を借りた人が貸した人に借りたときの状況に戻す(回復させる)義務のことで、大抵の場合契約書に記載されています。

そのため、会社は、当該資産除去債務を発生させる資産を計上する際に同額を資産除去債務として負債に計上しなければいけません。これが、資産除去債務会計の初歩の初歩なのですが、「部屋を借りる時に発生する義務のことだ!」と教えられれば、イメージしやすい一方で、資産除去債務を資産除去債務として勉強したらイメージが全くできないのではないでしょうか。

簿記1級では、このように具体例がパッと出てこない論点が2級に比べて増えるので、勉強がしにくいのです。 もちろん 論点も2級とは比べ物にならないくらい多いですしね。

簿記1級の試験時間が長い

3つ目の理由は試験時間が長い!です。簿記2級は商業簿記と工業簿記合わせて2時間で実施されました。しかし簿記1級試験では、商業簿記・会計学が1時間半、工業簿記・原価計算が1時間半の計3時間もあります。

また、商業簿記・会計学と工業簿記・原価計算の時間は分けられており、一方の時間にもう一方の問題を解くことができません。したがって各門の時間配分が重要になってきます。

3時間の試験時間中、集中し続けるのも地味にきつく、簿記1級を受けた後はぐったりとしてします人も多いのではないでしょうか。

簿記1級は年に2回しか開催していない

4つ目の理由は、簿記1級は簿記2級、3級の試験とは異なり、年に二回しか開催されません。下記表は2019年度の東京都における簿記検定の予定表です。

2月に実施される試験は、簿記2級と3級のみで1級の試験は実施されないことが分かると思います。これは単純に受かるチャンスが3分の2になってしまうということを意味しています。試験期間が開けば、モチベーションを保つのも難しくなるため、年に2回しか実施されないことは、簿記1級の難易度を高くしている理由の一つと考えられます。

簿記1級は上位10%しか合格しない

詳しくは別記事で解説していますが、簿記1級は傾斜配点と呼ばれる採点方式を採用していると考えられています。要するに相対評価による配点のことで、上位10%程度の人が合格するように点数を調整しているのです。

その証拠に、下表の合格率の推移を見れば合格率が10%を割ることはあっても大きく上回ることがない事が分かると思います。

また、簿記1級を受験する人の母集団も厄介で、私を含め公認会計士受験生は本番の練習代わりに簿記1級を受験してきます。そのため、合格者の大半は公認会計士受験生で占められていると考えられ、純粋な簿記1級受験生の合格率は相対的に低まるのです。

逆に受験資格にもなっている税理士試験ですが、意外にも工業簿記・原価計算があることを理由に、税理士受験生はあまり受験していないと思われます。大学時代の税理士試験受験生もあまり1級を受けている人はいませんでした。

まとめ

いかがでしたでしょうか。簿記1級がなぜ難しいのか分かっていただけたと思います。問題が単純に難しいことはもちろんですが、最後の理由である、母集団に公認会計士受験生が多く含まれていることと、そうした人たちを含めて母集団のうち上位10%の人しか受からないことが簿記1級の難易度をこれ以上ないくらいに高めていると推察します。

とはいえ、高い難易度を誇る簿記1級も絶対に受からないわけではありません。以下の記事では、どうやって簿記1級を攻略すればいいかについて解説します。

ABOUT ME
会計士てる
大学3年時に公認会計士試験に一発合格。 その後海外留学を経て、大手監査法人に入所。その後、製造系の上場企業の監査業務、IFRS導入支援業務に従事。現在は国際金融部にてフィンテック系企業及び金融機関の監査・コンサルティング業務を行なっている。