こんにちは会計士てるです。
簿記2級までは、独学で勉強した人も多いのではないかと思います。その一方で簿記1級は簿記2級に比べてぐっと難易度が上がると言われています。
そのため、簿記1級は独学で合格できるか気になっている人も多いのではないでしょうか。そこで、今日は簿記1級は独学で合格可能かどうかについてお話します。
簿記1級は独学で合格できるか
結論はタイトルで出ていますが、本文でも繰り返させてください。結論から言うと、簿記1級を独学で合格することは可能だと思います。しかし、効率性の観点からおすすめではなく、後述する専門学校に通う方がおすすめです。
ここで、簿記1級の難易度と勉強時間を見てみます。詳しくは下記記事に書きましたが、難易度は、2級の3倍程度、勉強時間にすれば1200時間かかると結論づけました。
じゃあ、純粋に簿記2級の3倍勉強すれば受かるのかと思われるかもしれませんがそれは違います。
上記1200時間は専門学校に通った場合の勉強時間であり、独学の場合は1800時間から2400時間程度かかると当ブログでは結論付けています。
なぜ、そんなに時間がかかるのかについては後述します。
本章の目的は独学で簿記1級に合格できるか否かです。その目的に照らせば、勉強時間だけ確保すればできなくはないと思います。また、実際に独学で1級を勉強した人もいらっしゃいます。
例えば、 http://toumaswitch.com/bookkeeping1-study/
や、 https://7treasure-tower.net/boki1dokugaku/
のブログの方は独学で簿記1級に合格されたようです。
ただし、前者はかなり昔の試験であり、そのころの簿記1級は今よりだいぶ簡単だったことが記事中で指摘されていますし、後者の人は合格時の点数が70点とかなりぎりぎりです。
したがって、ぎりぎりではありますが、合格することは可能だと結論付けます。。
簿記1級の独学をお勧めしない理由
前の章で簿記1級は独学でも合格可能だと結論付けました。 それでも私の立場としては独学はおすすめしません。理由は次の通りです。
独学は非効率
簿記1級の例えば、過去問を見たことのある方ならわかっていただけると思うのですが、財務会計では例えば事業分離や固定資産の減損、管理会計では、
設備投資のキャッシュ・ フロー予測 、活動基準原価計算といったように、普段耳馴染みがない論点が数多く出題されます。
もちろん、上場企業の経理部や財務部で働いている人であればこのあたりの論点もイメージできるのでしょうけど、簿記1級受験者の大半を占めている学生や主婦、小さな会社の経理の方などはイメージすることが難しいと思います。
理解できないものを覚えるのは難しいですし、暗記に頼った学習は問題の出題形式が変わったときに対応することができません。
簿記1級の 出題範囲は広範にわたるため、暗記で対応することは一部の人を除き困難です。したがって、理解を重視した勉強方法に頼らざるをえないのですが、具体的にイメージできないものを理解するのは難しいと思います。
この点、予備校講師は難しい論点にイメージを与えて教えることように訓練されているため、独学で勉強するよりもイメージしやすいと考えられます。
そのイメージが理解につながり、結果として効率のいい勉強につながるわけです。
独学の際に追加でかかる勉強時間
上記でも少し述べましたが、独学をした場合には専門学校に通った場合に比べて、600時間から1200時間の勉強時間がかかると思います。もちろん個人差があるので、なんとも言えないところはあるのですが、何となく試算してみることにしましょう。
まず 上記の理由から論点を理解する時間に独学と授業では差が出ると思われます。これが標準授業時間の50%かかったとします。TACの簿記1級講義の授業時間が約250時間なので、余分に125時間係る計算になります。
次に、簿記2級までは仕訳を切って集計するだけで解ける問題が大半だったと思いますが、1級だとそうはいきません。退職給付会計や連結会計に代表される論点では、予備校で教えられる解法を知っているか知らないかで大きな差が出ます。
そのため、そうした解法を調べたり、習得する時間が1論点1時間だとして、大体パッと思いつく限り20から30論点は解法がなければ解くのが難しいものがあるので、2,30時間余分にかかります。
また、予備校の強みとして、疑問を適切に相談し、解決できる点にあります。例えば、簿記1級の試験に合格するまでに疑問が全部で150問でたとします。これを自分で調べるとなると平均2時間かかるとして300時間かかります。予備校の場合、授業において疑問点をカバーできるのはもちろん、即質問し解決することが可能ですので、一問平均30分で解決できるとします。そうすると、疑問は75時間分となり、差の225時間が余分に発生する計算になります。
上記を合計すると、125+25+225なので、375時間は追加的に発生すると考えられます。最初に述べたざっくりした印象よりも少ないですね。
残りの時間は受からないことによる追加の勉強時間に当たると想定しています。
簿記1級の試験は年に2回しか行われないため、1回受かるのが遅れると追加で半年勉強しなければならなくなります。この点、専門学校の授業を受けていなければ、上記の通り勉強は不効率になり、合格確率は下がることになります。
そのため、本来であれば、受かっていた回にあと少しで届かず次の半年も勉強しなければならなくなる可能性が高いのです。
半年間、一日2時間~3時間勉強すれば、350時間~540時間になります。上記と足せばざっくり600時間程度になる計算です。
もちろん、中には独学の方が効率がいいっていう勉強が得意な方もいるかとは思いますが、そういった方を平均にして話をしても意味がないので、ここでは普通の能力を持った人(私くらいの)をベースにして計算していることをご了承ください。
あなたの1時間は何円か
大原やTACといった大手予備校の簿記1級講座の金額はざっくり10万円弱とかなり高くなっています。
ここで考えるべきは、追加的に発生するキャッシュインフロー(入ってくるお金)と1時間当たりに発生する固定費です。
追加的に発生するキャッシュインフロー(CIF)とは例えば、企業に勤めている方であれば、報奨金や資格手当などがあげられます。私が見たケースだと、簿記1級を持っている人の場合資格手当で月7500円支給している企業がありました。
また、ちょっとgoogleで調べたところ高いところでは2万円程度出している企業もあるようです。
学生の場合は、簿記1級を持っていることにより、より高い年収の企業に内定が取れることだったり、主婦の方だったらより高い時給のパートにつけることでしょうか。
ここで、月に7500円手当をもらえるのであれば、年に9万円収入が増えることになります。独学で勉強することにより、合格が半年遅れた場合は4.5万円の損です。
このように、本来であれば得られていた利益を逃すことを逸失利益(機会損失)といいます。厳密にはこの二つは違うのですが、細かい事は気にしません。
「半年で4.5万円の損失なら講義を受けて10万円支払うよりも安いから独学の方が得じゃないか」というツッコミもあるかと思います。
そこで、次に考えるべきが1時間当たりの固定費です。半年遅れた際に失うものは4.5万円だけではありません。当たり前ですが追加で勉強する時間が失われます。
そこで、あなたの1時間は何円かという話になるのです。
例えば、追加でかかった勉強時間で残業したり学生の方であればアルバイトをしていれば、それだけの収入があったとこになります。
つまり、無駄に多く勉強するということは、その時間働いていたら稼げていたはずの収入を逃したのと同じ意味を持っているのです。
さてここで、追加に勉強する時間が600時間の場合、東京都の最低賃金である985円で働いたとしても51万9千円になります。もっと少なく300時間程度だと見積もっても26万円の計算になります。
正社員として働いている場合、少なくとも1,500円程度の残業代は支払われると思いますので、1500円*600時間で90万円にもなります。
また、残業をしなかったとしても浮いた時間で、例えばTOIECの勉強でもすれば、さらなる収入の増加が見込まれます。600時間TOEICの勉強ができれば700点は取れると思いますので、簿記と同様に資格手当かあるいは転職などにより収入が上がることが期待できます。
以上の通り、いかに非効率な勉強が経済的に損失になるかご理解いただけたと思います。
こうした損失を防ぐためであればTACか大原に10万円払うのは大きな得になることが分かると思います。
時間は価値のある資産であり、何もしなければ、の時間働いていれば得られたであろうお金を逃しているのと同じなのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。簿記1級を独学で合格することは可能だとは私も思います。しかし、それと引き換えに失われる時間に比べれば、受講料は高いわけではないということも分かったのではないかと思います。
もちろんとはいっても10万円の受講料をパッと払うことは多くの人にとっては難しいと思いますし、またTACと大原のどちらがいいかもわからないと思います。
なので、まずは簿記1級講座についてTACと大原に資料請求するところから始めるのがいいと思います。もう少し、情報を集めて本当にやる価値があると判断してからでも遅くはないので。
大きな金額なだけに申し込むには勇気が必要だと思いますが、上記の通りあなたの価値からすれば申し込んで効率的に合格した方が結果的にはお得になるはずです!
